ktonnの斜塔

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そして、父になる ~親子の愛~

是枝監督の作品は、主演の柳楽優弥君がカンヌの主演男優賞を獲ったことで話題になった「誰も知らない」以来。

ストーリーは、子どもの取り違いが出産から6年後に発覚した、2つの家族の物語。

福山雅治さんが演じるバリキャリのと、そんな父のプレッシャーに気後れしてしまっている母と子ケイタ

一方、父の本当の息子(琉生)は小さな電気店を営む夫婦の元で育てられていた。

2組の両親は、一旦実子を育てる選択をするが、親も子どもたちも、そう簡単に新しい環境に馴染めない。

そんな中、琉生は家出をし、電気店に帰ってしまう。

琉生を連れ戻したはいいが、自分達の選択は正しかったのか、父自身も自分の中に生じた葛藤を打ち消す事ができないでいる。

そして、父が何気なく見たカメラに、ケイタが撮った自分の寝姿を発見した時に、父は涙し、結局ケイタを迎えに電器店を訪れる。

 

何はともあれ、私はケイタ君がたまらなかった。
父が望むような、利発な子ではなかったけれど、母と同じように父に憧れ、愛を求めていた心優しいケイタ。
カメラに納められていたのは、そんなケイタからのラブレターだったのだと思う。
このラブレターをきっかけに、父もまた、ケイタへの愛に気付く。
子どもとは、どんな親でも、愛し愛されることを求める存在なのだろう。


感情表現が豊かな琉生とは違う方法で、ケイタもまた、環境の変化に戸惑い、苦しんでいる。
父が家出した琉生を迎えに来たとき、ケイタは自分を迎えに来てくれたと思うが、名前も呼ばずに父は帰ってしまう。
最後にケイタを迎えに来たとき、ケイタは諦めと淡い期待と同時に、もう傷付けて欲しくないと思ったのではないだろうか。
そして、父が自分の名前を呼んだとき、嬉しさとまた傷付く不安で家を飛び出してしまったのだろう。
父が、長い道をケイタを追いかけ歩くシーンは、まるで怒った恋人を追いかけるシーンのようだ。


「パパなんて、パパじゃない。」
自分がいかに悩み、傷ついたか。
優しいケイタの、精一杯の反抗だったのだろう。
ケイタの一言は、子をもうけたから、皆が親になるのではないと改めて気付かせる。
様々な問題に直面し、それぞれがもがき苦しみ、親が子の愛に気付き、子を愛することを知った時、人は初めて親になるのかもしれない。